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人々の必要にこたえるケベック手話への翻訳

人々の必要にこたえるケベック手話への翻訳

カナダ東部のフランス語圏では,ほとんどのろう者がケベック手話(LSQ)を使っています。 a ろう者のコミュニティーはわずか6000人なので,ケベック手話で入手できる出版物は限られています。しかしエホバの証人は近年,質の高いケベック手話の出版物を無償で提供できるよう,いっそうの努力を払ってきました。人々が聖書を理解するのを助けるためです。

このような翻訳の努力が大変意義深いのはなぜかを理解するため,マーセルの例を考えてみましょう。マーセルは1941年,カナダのケベック州で生まれました。2年後,髄膜炎にかかり聴力を失いました。「9歳の時にろう学校へ行き始め,そこでケベック手話を学びました」とマーセルは述べています。「基本的な手話を教える本は幾らかありましたが,手話の出版物はありませんでした」。

ケベック手話で出版することが重要なのはなぜでしょうか。マーセルはこう答えています。「ろう者は言語の壁で苦労することなく,自分たちがよく理解できる言語で情報を得たいと思っています。ケベック手話の出版物がないと,一般に話されている言語に頼らざるを得ないので,多くの情報を得損なってしまいます」。

マーセルやケベック手話を使っているほかのろう者の必要にこたえるため,エホバの証人は2005年に初めてケベック手話の出版物を発行しました。最近,ケベック州モントリオールにあるエホバの証人の翻訳事務所は拡張されました。そこでは現在7人の全時間奉仕者に加えて十数人がパートタイムで奉仕しています。3つの翻訳チームが組織され,事務所内にある専門の設備をそろえた2つのスタジオを使ってケベック手話のビデオを制作しています。

ケベック手話コミュニティーはエホバの証人が制作した出版物の質を高く評価しています。エストリーろう者協会 bの副会長ステファン・ジャックはこのように述べています。「彼らが制作している出版物はとてもよくできています。手の動きは本当に自然で,顔の表情もいいです。ビデオに出てくる人たちの身なりがきちんとしていることも素晴らしいと思います」。

世界中のエホバの証人の集会で毎週使われている「ものみの塔」誌は現在ケベック手話で入手でき,ケベックにあるケベック手話の7つの会衆および群れに属するエホバの証人220人や集会の出席者が使っています。 c さらに,証人たちが制作してインターネット上で配信する他のケベック手話ビデオの数も増え続けており,その中には聖書に基づく心を高揚させる歌も含まれています。

前述のマーセルはケベック手話出版物がさらに多く入手可能になっていることに胸を躍らせています。そして特にエホバの証人が出版しているものに感謝しています。マーセルはこのように述べています。「たくさんのケベック手話ビデオをjw.orgで見られるのは祝福です。すべてのコンテンツを自分の言語で見られたら本当にうれしいです」。

a ケベック手話(LSQはフランス語のLangue des signes québécoiseから取られている)は,より広く用いられているアメリカ手話と共通する特徴が幾らかあるものの,独自の手話言語です。

b ケベックにあるろう者のための慈善団体。

c 毎月の研究用「ものみの塔」誌のケベック手話版は2017年1月号より発行されています。