定冠詞
文法用語で,品詞の1つ。幾つもの言語にあり,定冠詞の用法は言語によって大きく異なる。英語の定冠詞(the)は,名詞の意味を限定する,特定の人や物を指す,既出か既知のものであることを示す,などの用法がある。強調のために使われることもある。
コイネー・ギリシャ語には定冠詞「ホ」があり,英語の定冠詞に似た所がある。ギリシャ語の定冠詞は名詞の意味を限定して特定の人や物を指すのに使われる。例えば,ギリシャ語ディアボロスは「中傷する者」と訳されるが,多くの場合,定冠詞を伴って,特定の存在,悪魔(ホ ディアボロス)を指す。定冠詞は「キリスト」という称号と一緒に使われる(ホ クリストス)こともあり,この構造はイエスのメシアとしての地位を強調していると思われる。ギリシャ語の定冠詞は,性,数,格によって語形が異なる。時には定冠詞によって,名詞が主語か目的語か,名前が男性か女性かなどが分かる。ギリシャ語の定冠詞の形によっては,「の」や「で」など助詞の意味まで含まれる。
コイネーで名詞に冠詞が付いていない場合,文脈に応じて,ただの名詞あるいは説明語として訳せる。例えば,ギリシャ語ディアボロスに冠詞が付いていない場合,「中傷する人」や「中傷する」と訳せる。(ヨハ 6:70。テモ一 3:11。テト 2:3)ギリシャ語の定冠詞について,「聖書に対する洞察」第1巻,「ギリシャ語」の見出し,「冠詞」を参照。