1. 人ひとが誰だれかを「許ゆるす」と言いうとき，それはどんなことを意い味みする場ば合あいがありますか。

 誰だれかを傷きずつけるようなことを言いったりしたりしてしまったことがありますか。そういうとき，許ゆるしてもらえるとほっとするものです。でも，一ひと口くちに「許ゆるす」といってもいろいろな意い味みがあります。完かん全ぜんに仲なか直なおりするつもりで「許ゆるす」と言いう場ば合あいもあれば，ただその件けんについてはもう話はなさないという意い味みでそう言いう場ば合あいもあります。

 2. 聖せい書しょによると，エホバはどのように許ゆるしてくださいますか。（脚きゃく注ちゅうも参さん照しょう。）

² エホバの許ゆるし方かたは人にん間げんの許ゆるし方かたと大おおきく違ちがっています。それは特とく別べつなものです。詩し編へん作さく者しゃはエホバについてこう言いいました。「あなたは本ほん当とうに許ゆるす方かた。それで人ひとはあなたに畏い敬けいの気き持もちを抱いだく」。 a （詩し 130:4）エホバは「本ほん当とうに許ゆるす方かた」です。エホバの手て本ほんから，許ゆるすことの真しんの意い味みを学まなべます。聖せい書しょの中なかでは，エホバが許ゆるすことに関かんして，人ひとが誰だれかを許ゆるすときには決けっして使つかわれないヘブライ語ご表ひょう現げんが使つかわれることがあります。

 3. エホバの許ゆるし方かたは人にん間げんとどのように異ことなっていますか。（イザヤ 55:6，7）

³ エホバが誰だれかを許ゆるすとき，その人ひとの罪つみは完かん全ぜんに消けし去さられます。壊こわれていた関かん係けいはすっかり元もと通どおりになります。エホバは驚おどろくほど寛かん大だいに，そして完かん全ぜんに許ゆるしてくださいます。（イザヤ 55:6，7を読よむ。）

 4. 本ほん当とうの許ゆるしがどのようなものかを理り解かいできるようエホバはどのように助たすけてくださっていますか。

⁴ 不ふ完かん全ぜんな私わたしたちが，エホバの許ゆるし方かたについて本ほん当とうの意い味みを理り解かいすることはできるのでしょうか。エホバは私わたしたちのために，聖せい書しょ の中なかで生いき生いきとした表ひょう現げんを幾いくつも使つかって許ゆるしについて教おしえています。この記き事じではその幾いくつかを考かんがえ，エホバがどのように罪つみを取とり除のぞき，壊こわれた関かん係けいを修しゅう復ふくしてくださるかについて学まなびます。さまざまな表ひょう現げんからエホバの許ゆるし方かたについてさらに理り解かいできると，愛あい情じょう深ぶかいお父とうさんエホバへの感かん謝しゃはもっと深ふかまることでしょう。

エホバは罪つみを取とり除のぞく

 5. エホバは私わたしたちの負おっている罪つみをどうしてくださいますか。

⁵ 聖せい書しょでは，罪つみはよく重おもい荷に物もつに例たとえられています。ダビデは自じ分ぶんの犯おかした罪つみについて次つぎのように言いいました。「私わたしの過あやまちは頭あたまの上うえに高たかく積つみ重かさなる。負おい切きれない重おもい荷に物もつのように」。（詩し 38:4）でもエホバは，悪わるい行おこないを悔くい改あらためた人ひとの罪つみを許ゆるしてくださいます。（詩し 25:18; 32:5）このような場ば合あいに使つかわれる「許ゆるす」という意い味みのヘブライ語ごの表ひょう現げんは基き本ほん的てきに，「持もち上あげる」とか「運はこぶ」という考かんがえを含ふくんでいます。エホバは私わたしたちの罪つみを許ゆるすとき，重おもたい荷に物もつを代かわりに背せ負おって持もっていってくれるかのように，罪つみを取とり去さってくださいます。

 6. エホバは私わたしたちの罪つみをどれほど遠とおくに離はなしてくださいますか。

⁶ エホバは私わたしたちの罪つみをどれほど遠とおくに取とり去さってくださるのでしょうか。詩し編へん 103編ぺん12節せつにはこうあります。「日ひの出では日ひの入いりから遠とおく離はなれている。同おなじように，神かみは私わたしたちの違い反はんを私わたしたちから遠とおくに離はなしてくださった」。東ひがしと西にしは全まったく反はん対たいの方ほう角がくなので，ある意い味みで一いち番ばん遠とおいといえます。この2つが重かさなることは絶ぜっ対たいにありません。エホバは私わたしたちの想そう像ぞうできる一いち番ばん遠とおい所ところにまで罪つみを持もっていってくださるのです。エホバがこのように許ゆるしてくださることを考かんがえると，本ほん当とうに安あん心しんできます。

 7. エホバは私わたしたちの罪つみをどうしてくださいますか。（ミカ 7:18，19）

⁷ エホバが私わたしたちの罪つみを遠とおくに持もっていくということは，その罪つみをエホバがずっと持もっているということなのでしょうか。そうではありません。ヒゼキヤ王おうはエホバについてこう書かきました。「私わたしの全すべての罪つみをご自じ分ぶんの後うしろに投なげ捨すててくださいました」。これは脚きゃく注ちゅうによると，「私わたしの全すべての罪つみをご自じ分ぶんの視し界かいから取とり除のぞいてくださいました」とも訳やくせます。（イザ 38:9，17，脚きゃく注ちゅう）エホバは悔くい改あらためた人ひとの罪つみを投なげ捨すてて，見みえなくなるようにしてくださるということです。この表ひょう現げんは，「あなたは[私わたしの罪つみを]まるで生しょうじなかったかのようにされた」と訳やくすこともできます。ミカ 7章しょう18，19節せつにはこのことを強きょう調ちょうする別べつの表ひょう現げんが使つかわれています。（読よむ。）そこではエホバが罪つみを深ふかい海うみの中なかに投なげ込こんでくださると書かかれています。当とう時じ，深ふかい海うみの中なかに何なにかを投なげ込こんだなら，それを取とり戻もどすことはできなかったでしょう。

 8. ここまでで，どんなことを学まなびましたか。

⁸ こうした表ひょう現げんから，エホバは私わたしたちを許ゆるすとき，罪つみという重おも荷にから解かい放ほうしてくださることが分わかります。ダビデはこう言いいました。「不ふ法ほうな行おこないを許ゆるされ，罪つみを覆おおわれた人ひとは幸しあわせだ。罪つみがあるとエホバから見みなされない人ひとは幸しあわせだ」。（ロマ 4:6-8）本ほん当とうに許ゆるしてもらえると，このように感かんじることができます。

エホバは罪つみを拭ぬぐい去さる

 9. エホバがどれほど許ゆるしてくださるかが分わかるどんな表ひょう現げんがありますか。

⁹ エホバは贖あがないの犠ぎ牲せいによって，悔くい改あらためた人ひとの罪つみを拭ぬぐい去さってくださいます。この点てんについ て理り解かいを深ふかめるのに役やく立だつ別べつの表ひょう現げんも考かんがえてみましょう。エホバは罪つみを洗あらい流ながし，洗あらい落おとしてくださいます。その結けっ果か，罪つみを犯おかした人ひとは清きよい状じょう態たいになります。（詩し 51:7。イザ 4:4。エレ 33:8）エホバはそのことを次つぎのように表ひょう現げんしています。「あなたたちの罪つみは緋ひのようだが，雪ゆきのように白しろくされる。紅くれないの布ぬののように赤あかいが，羊よう毛もうのようになる」。（イザ 1:18）布ぬのから緋ひ色いろや紅くれない色いろの染しみを取とり除のぞくのは本ほん当とうに難むずかしいことです。それでも，エホバは私わたしたちの罪つみを見みえなくなるまで完かん全ぜんに洗あらい流ながすと保ほ証しょうしています。

10. エホバが寛かん大だいに許ゆるしてくださることは，どんな表ひょう現げんから分わかりますか。

¹⁰ 前まえの記き事じで考かんがえた通とおり，罪つみは「負ふ債さい」にも例たとえられています。（マタ 18:32-35）それでエホバに罪つみを犯おかすたびに，私わたしたちの負ふ債さいはどんどん増ふえていっているといえます。エホバに対たいして多た額がくの借しゃっ金きんを負おっているようなものです。でも，エホバは私わたしたちの罪つみを許ゆるし，負ふ債さいを取とり消けしてくださいます。一いち度ど許ゆるした罪つみを蒸むし返かえすようなことはしません。エホバがこのように許ゆるしてくださる時とき，本ほん当とうにすがすがしい気き持もちになり，安あん心しんできます。

11. 罪つみが「消けし去さ」られるという聖せい書しょの表ひょう現げんにはどんな意い味みがありますか。（使し徒と 3:19）

¹¹ エホバは私わたしたちの罪つみという負ふ債さいを取とり消けすだけでなく，消けし去さってくださいます。（使し徒と 3:19を読よむ。）負ふ債さいを取とり消けすと聞きくと，帳ちょう簿ぼにある数すう字じの上うえに大おおきく×印じるしを書かくようなイメージかもしれません。でも，それだと×の下したの数すう字じはまだ読よめます。では，消けし去さるとはどういうことでしょうか。古こ代だいに使つかわれていたインクは，すすと樹じゅ脂しと水みずを混まぜて作つくられたもので，水みずを含ふくませた海かい綿めんで拭ぬぐえば文も字じを消けすことができました。それで，負ふ債さいは「消けし去さ」られると，完かん全ぜんに存そん在ざいしなくなりました。もともと何なにが書かかれていたか肉にく眼がんでは見みえなくなり，その記き録ろくは最さい初しょからなかったかのようになりました。エホバが私わたしたちの罪つみを取とり消けすだけでなく，完かん全ぜんに消けし去さってくださることを考かんがえると，本ほん当とうに温あたたかい気き持もちになります。（詩し 51:9）

12. 厚あつい雲くもで覆おおうという表ひょう現げんからどんなことが分わかりますか。

¹² エホバがどのように私わたしたちの罪つみを消けし去さってくださるか，別べつの表ひょう現げんも考かんがえましょう。エホバはこう言いっています。「私わたしはあなたの違い反はんを雲くもで覆おおうかのように，あなたの罪つみを厚あつい雲くもで覆おおうかのように覆おおい隠かくす」。（イザ 44:22）エホバが許ゆるしてくださる時とき，私わたしたちの違い反はんはまるで厚あつい雲くもで覆おおわれるかのように，全まったく見みえなくなります。

13. エホバに罪つみを許ゆるしていただくと，どんな気き持もちになりますか。

¹³ どんなことを学まなべたでしょうか。エホバが罪つみを許ゆるしてくださったなら，私わたしたちは犯おかした罪つみを一いっ生しょう残のこってしまう汚お点てんのように感かんじる必ひつ要ようはありません。イエス･キリストの血ちによって，私わたしたちの負ふ債さいは完かん全ぜんに取とり消けされました。そうした負ふ債さいがそもそも存そん在ざいしなかったかのように見みなしてくださるのです。エホバが悔くい改あらためた人ひとを許ゆるすというのはこういうことです。

エホバは良よい関かん係けいを回かい復ふくさせる

14. エホバが許ゆるしてくださることを信しんじられるのはどうしてですか。（写しゃ真しんと挿さし絵えも参さん照しょう。）

¹⁴ エホバは罪つみを本ほん当とうに許ゆるしてくださる方かたなので，私わたしたちはエホバとの良よい関かん係けいを築きずくことができます。そのことを考かんがえると，罪ざい悪あく感かんに悩なやまされずに済すみます。エホバが実じつはまだ怒おこっていてどう罰ばつを与あたえるかを考かんがえているのではないか， と心しん配ぱいする必ひつ要ようはありません。そんなことは絶ぜっ対たいにないからです。エホバが許ゆるしてくださることを信しんじられるのはどうしてでしょうか。エレミヤはエホバについてこう言いっています。「私わたしは彼かれらの過あやまちを許ゆるし，彼かれらの罪つみをもはや思おもい出ださない」。（エレ 31:34）パウロもこの言こと葉ばを引いん用ようして，「私わたしは……彼かれらの罪つみをもはや思おもい出ださない」と書かきました。（ヘブ 8:12）ではこれはどういう意い味みなのでしょうか。

15. エホバが罪つみをもはや思おもい出ださないというのはどういう意い味みですか。

¹⁵ 聖せい書しょの中なかで「思おもい出だす」という表ひょう現げんは，必かならずしも過か去こに起おきたことを思おもい起おこしたり考かんがえたりすることを指さすわけではなく，行こう動どうを起おこすという意い味みを含ふくむことがあります。イエスの隣となりで杭くいに掛かけられていた犯はん罪ざい者しゃは，「イエス，王おう国こくに入はいる時ときに私わたしを思おもい出だしてください」と言いいました。（ルカ 23:42，43）単たんに自じ分ぶんのことを思おもい起おこしてほしいとお願ねがいしていたわけではありませんでした。続つづくイエスの答こたえは，イエスがその人ひとを復ふっ活かつさせるために行こう動どうを起おこすつもりであることを示しめすものでした。それで，エホバが私わたしたちの罪つみをもはや思おもい出ださないというのは，私わたしたちを処しょ罰ばつするために行こう動どうを起おこすことはないという意い味みです。エホバは以い前ぜんに許ゆるした罪つみのことで，後あとから処しょ罰ばつしたりはしません。

16. 聖せい書しょによると，エホバが許ゆるしてくださっているおかげで，私わたしたちは何なにから自じ由ゆうになっていますか。

¹⁶ エホバが本ほん当とうに許ゆるしてくださるおかげで，私わたしたちは自じ由ゆうになることができています。そのことを理り解かいする上うえで役やく立だつ別べつの表ひょう現げんが聖せい書しょに載のせられています。私わたしたちは生うまれながらにして罪つみを犯おかす傾けい向こうがあるので，「罪つみの奴ど隷れい」に例たとえられています。でも，エホバが許ゆるしてくださっているおかげで「罪つみから自じ由ゆうに」なることができました。（ロマ 6:17，18。啓けい 1:5）確たしかに，エホバに許ゆるしてもらっている私わたしたちは幸しあわせです。奴ど隷れいだったのに自じ由ゆうにされたからです。

17. エホバに許ゆるしていただくことで，私わたしたちはどのように癒いやされますか。（イザヤ 53:5）

 ¹⁷ イザヤ 53:5を読よむ。最さい後ごにもう1つ別べつの表ひょう現げんを考かんがえてみましょう。聖せい書しょによると，私わたしたちはある意い味みで命いのちに関かかわる重おもい病びょう気きにかかっているといえます。エホバはご自じ分ぶんの子こイエスを通とおして贖あがないの犠ぎ牲せいを与あたえることによって，私わたしたちを癒いやしてくださっています。（ペテ一いち 2:24）私わたしたちはエホバとの関かん係けいが損そこなわれているという意い味みで，病びょう気きのような状じょう態たいでした。でも贖あがないのおかげで，エホバとの良よい関かん係けいを完かん全ぜんに取とり戻もどすことが可か能のうになりました。重おもい病びょう気きから回かい復ふくすると本ほん当とうにうれしく感かんじるのと同おなじように，私わたしたちはエホバに許ゆるしていただき，再ふたたびエホバから良よいと認みとめられて，いわば癒いやされると本ほん当とうにうれしく感かんじます。

エホバが許ゆるしてくださるおかげで可か能のうになること

18. エホバが許ゆるしてくださることについての聖せい書しょ中ちゅうのいろいろな表ひょう現げんから，どんなことが分わかりましたか。（「エホバはどのように許ゆるしてくださるか」の囲かこみも参さん照しょう。）

¹⁸ エホバが許ゆるしてくださることについての聖せい書しょ中ちゅうのいろいろな表ひょう現げんから，どんなことが分わかったでしょうか。エホバは許ゆるす時ときに全ぜん面めん的てきに許ゆるします。後あとになってそのことを持もち出だすことは決けっしてありません。私わたしたちはそのおかげで，天てんのお父とうさんエホバとの良よい関かん係けいを持もつことができます。一いっ方ぽうで，そのようにエホバから許ゆるしてもらえるのは当あたり前まえのことではありません。それは，エホバが罪つみを負おった人じん類るいを愛あいし，惜おしみない親しん切せつによって与あたえてくれた贈おくり物ものです。私わたしたちが当とう然ぜんの権けん利りとして要よう求きゅうできるようなものではありません。（ロマ 3:24）

19. （ア）どんなことに感かん謝しゃしたいと思おもいますか。（ローマ 4:8）（イ）次つぎの記き事じではどんなことを考かんがえますか。

¹⁹ ローマ 4:8を読よむ。エホバは「本ほん当とうに許ゆるす方かた」です。そのことに感かん謝しゃしたいと思おもうのではないでしょうか。（詩し 130:4）でも，許ゆるしていただきたいと思おもうなら，私わたしたちの側がわにもしなければいけないことがあります。イエスはこう言いっています。「人ひとの過あやまちを許ゆるさないなら，父ちちもあなたたちの過あやまちを許ゆるされません」。（マタ 6:14，15）私わたしたちはエホバに倣ならって人ひとを許ゆるす必ひつ要ようがあるということです。ではどうすればそうできるでしょうか。その点てんを次つぎの記き事じで考かんがえます。